この記事でわかること
- バストケアとは、妊娠中~産後の胸の変化に合わせて、乳房と乳首(乳頭)の保湿やマッサージに継続的に取り組むケアの総称です。妊娠中・授乳期・卒乳後ごとに、胸に起こる変化や意識したいケアのポイントが異なります。
- 妊娠中は、バストがサイズアップします。妊娠線やバストまわりの肌の予防ケアをしっかり行いましょう。
- 乳首(乳頭)マッサージは、妊娠後期、妊娠37週以降に医師の許可が出たら始めます。
- 授乳期は、乳腺炎の予防に気を付けましょう。
- 卒乳後は、バストのハリが失われ胸がしわしわになったと感じる人も…。確実な改善方法がないのが現状ですが、保湿ケアを続けていくことが大切です。
- 妊娠中~産後は、乳首(乳頭)にもトラブルが起こりがちです。妊娠中は乾燥によるかゆみ、授乳期は刺激によるヒリヒリや痛みなどが多くみられます。
監修:布施 明美先生
医療法人産育会 堀病院 副院長兼看護部長。助産師/認定看護管理者。周産期医療、母子保健、助産師教育を専門とし、母子の健康支援と周産期医療の質向上に長年取り組む。
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1. 妊娠中・授乳期・卒乳後のバストケアとは

バストケアとは、妊娠、出産、授乳、卒乳という一連の過程の中で大きく変化し続ける胸の状態に合わせて、乳房と乳首(乳頭)の保湿・マッサージに継続的に取り組むケアの総称です。
妊娠2ヶ月頃から乳腺が発達し、胸はどんどん大きく張っていきます。また、ホルモンバランスの変化によって、胸を含むお肌全体がデリケートになり、乾燥や肌荒れを起こしやすくなります。
赤ちゃんが生まれた後は、3~4日で胸がパンパンに張ってきます。乳腺炎対策をしながらの授乳生活が続きます。
卒乳すると、それまで張っていた胸が戻りますが、その際に「胸がしわしわになった」「妊娠前より胸がやわらかくなった」と感じる人も少なくありません。
これらのバストの変化を時期ごとに詳しく見ていきましょう。
※産前産後のバストの発達には個人差があります。
2. 【妊娠中】のバストの変化と基本ケア
妊娠すると、女性ホルモンの分泌が増えて乳腺が発達し、胸の張りが出て大きくなっていきます。バストサイズは最大約2カップ分アップするといわれています。
あわせて、乳首(乳頭)や乳輪も大きく、色も黒っぽく変化していきます。
また、ホルモンバランスの変化により、肌が乾燥しやすくなります。妊娠前にはなかった乳首(乳頭)の乾燥やかゆみを感じる人もいます。

乾燥は肌の柔軟性を低下させるので、保湿ケアを念入りに続けることが大切です。朝晩2回、おなか周りだけでなく胸もしっかりケアをしましょう。保湿剤を乳房の外側から円を描くようになじませ、脇やデコルテにも広げます。
なお、乳首(乳頭)は敏感になっているので、強く刺激しないようにそっと塗るだけにしてください。
■妊娠37週を過ぎたら乳首マッサージをプラス
赤ちゃんがおっぱいを飲む準備として、乳首(乳頭)をやわらかく柔軟にしておくことが大切です。妊娠後期からケアをしておくと、母乳が出る通り道(乳管)がスムーズに開きやすくなり、赤ちゃんが吸いやすい乳首(乳頭)の状態に近づいていきます。
乳首(乳頭)マッサージは、妊娠37週以降、医師の許可を得たうえで始めましょう。乳首(乳頭)への刺激はおなかの張りにつながることがあるため、妊娠初期・中期から始めるのは避けてください。
なお、おなかの張りを感じやすい方や、切迫早産の傾向がある方は、妊娠37週を過ぎても、乳頭への刺激を控えるべき場合があります。自己判断でケアを進めず、必ずかかりつけの医師・助産師に確認してください。
▶関連記事:乳首・乳頭マッサージとは?妊娠中のやり方・時期・陣痛との関係も解説【助産師監修】
3. 胸・おっぱいにも妊娠線はできる?

妊娠線というとおなかにできるイメージがあるかもしれませんが、バストにも妊娠線ができることがあります。
妊娠線は、柔らかな表皮が急激に伸びる一方で、柔軟性の低い真皮や皮下組織が追いつけずに亀裂となって表れるもの。乳腺の発達によって大きくなった胸に表れる可能性もあります。
▶関連記事:妊娠線は胸や太ももにもできるってホント?おなか以外の部位別ケア【助産師監修】
4. 【授乳期】のバストの変化と基本ケア

お産を終え3〜4日ほどで胸が張ってきます。ただ、生まれてすぐの赤ちゃんがおっぱいを吸える量はほんの少しなので、乳房の中で母乳が溜まってしまい、痛みが生じるほどパンパン、カチカチになることもあります。
また、赤ちゃんが吸うことによって乳首(乳頭)に刺激が加わり、痛みや荒れが起きることも…。
胸の張りは、日々経過する中で落ち着いてきます。乳房の状態が安定すると授乳が上手にできるようになる方が多いです。
■産後1ヶ月は乳腺炎予防のため「残乳処理」を
乳腺炎予防のため、また母乳量を安定させるためにも、授乳後に張りが残っている場合は残乳処理を行いましょう。
やり方は、乳房の下から上へ、外側から中へと、手でやさしく圧をかけるように押し出します。無理に絞り出す必要はありません。残った母乳を出しておくことでまた新たな母乳がつくられ、このサイクルを繰り返すうちに母乳の量と赤ちゃんの吸う量が合ってきて、胸の張りも落ち着いてきます。
■乳腺炎予防には授乳時の抱き方もひと工夫
横抱き・縦抱き・フットボール抱きなど、抱き方を変えていろいろな方向から赤ちゃんに吸ってもらうことで、残乳を防ぐことができ、乳房全体からまんべんなく母乳が出やすくなります。同じ抱き方ばかりに偏らずに、いろいろなスタイルを試してみましょう。

■トラブルがなければ乳首ケアは必要なし
新生児期の授乳は1日8~12回にものぼります。赤ちゃんが吸うたびに乳首(乳頭)には刺激が加わるため、基本的には乳首(乳頭)マッサージは必要ないでしょう。乳首(乳頭)が固くて赤ちゃんが吸い付きにくい場合は、授乳前に乳頭をマッサージし柔らかくすると赤ちゃんが乳頭に吸い付きやすくなります。
また、母乳を与える前に「乳首を拭いて清潔にしなきゃ」と心配するママもいるようですが、拭く必要はありません。
乳首(乳頭)付近にあるモントゴメリー腺には、乳首(乳頭)を保護し細菌の増殖を防ぐ分泌物が出ています。そのため基本的には何もしなくても清潔と保湿の両方を保つことができ、そのまま赤ちゃんの口に含ませて問題ないとされています。
母乳パッドはこまめに替えましょう。母乳がこぼれたときや、汗をかいてそのまま含ませるのには抵抗がある場合は、やわらかなタオルなどで軽くおさえ拭きする程度にとどめます。
5. 【授乳後】【卒乳後】の胸がしわしわに感じる理由とケア

授乳とは、母乳が作られて胸が張り、赤ちゃんが母乳を飲んで胸がしぼむ…を繰り返すもの。すなわち、バスト周りの皮膚が伸び縮みを繰り返していることになります。
そのため、授乳後や卒乳を迎えた時に、母乳で張っていた胸とのギャップとともに皮膚の変化を感じ、「胸がしわしわになった…」と感じるようです。
■妊娠中から、バスト周りの肌にハリを与えるケアを
バスト(乳房)は、デコルテからつながる肌に支えられています。授乳によってバストの収縮を繰り返すと、同時に肌も収縮を繰り返し、卒乳したときには伸びた肌が元に戻らず、シワっぽさを感じることが多いようです。
妊娠中からバストまわりの肌にハリを与えるケアをしておくと、肌が伸びてしまうことの予防につながります。先述の通り、乾燥や黒ずみなど産前産後のバストには特有の悩みの多いため、それらをトータルでケアできるマタニティ専用のバストケア製品を使うのもいいでしょう。
また、授乳する時の姿勢はどうしても前かがみになりがちです。日ごろから姿勢に気を付け、軽いストレッチや運動で胸の土台となる大胸筋や周囲の筋肉をキープすることも大切です。
授乳期から産後にかけて刻々と変化する胸の状態を観察し、その時期ごとにきちんとサイズの合った下着(ブラジャー)を選ぶことも意識しましょう。
6. バストケアに使う保湿ケアアイテムの選び方

バストケアで使う保湿ケアアイテムを選ぶ際は、以下のポイントを意識しましょう。
❶低刺激処方
デリケートな胸・乳首(乳頭)周りに使うため、無香料・無着色など肌への負担が少ない処方を選びましょう。
❷高い保湿力
乾燥トラブルを防ぐには、保湿力が欠かせません。肌が乾燥しやすい妊娠中でも、朝晩のケアでうるおいが持続する製品を選びましょう。ハリや肌の黒ずみ※もケアできるものだと、産前産後のバスト悩みをトータルでケアできて便利です。
※乾燥や古い角質によるもの
❸続けやすいテクスチャー
大切なのは、毎日のケアを習慣づけることです。ニオイやベタつきがなく、肌になじみやすく使い心地が好みであること、容器の使い勝手なども大切です。
■乳頭ケアにはオイルタイプがおすすめ
バスト全体の保湿には、全身ケアと同様にのびのよい乳液やクリームが適していますが、乳首(乳頭)専用のケアアイテムを加えるなら、オイルタイプがおすすめです。オイルは密着性が高く肌の柔軟性を高める効果が高いため、乳首(乳頭)の保湿と保護に適しています。妊娠37週以降の乳首(乳頭)マッサージにも使いやすいでしょう。
授乳期に使う際は、赤ちゃんの口に入っても安全な成分でできた製品を選ぶと安心です。
▶︎関連記事:乳頭ケアアイテムとは?|時期別の選び方と使い方ポイント【助産師監修】
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7. 乳首のこんなトラブルが気になったら…
バストの中でも乳首(乳頭)は、皮膚が薄くデリケートな部位のため、時期によってさまざまなトラブルが起こる可能性があります。
■妊娠中は乳首の乾燥やかゆみが起こりがち
妊娠月齢が進むにつれ、乳首(乳頭)や乳輪は大きく黒ずんでいきます。その変化は正常なものですが、乾燥でヒリヒリしたり皮がむけたり、かゆみが生じることもあります。
まずは妊娠中にも使える低刺激アイテムでの毎日の保湿ケアで予防をしましょう。改善しない場合は、受診が必要です。
▶関連記事:乳首のかゆみ、カサカサが気になる…妊娠中・授乳期に起こる乳首の乾燥トラブルケア【助産師監修】
■乳児期は乳首のヒリヒリや痛みが発生することも
赤ちゃんの吸い方などによっては、乳首(乳頭)が傷ついてしまうことも…。ヒリヒリ感が出たり痛みを覚えたときは、乳首(乳頭)用のオイルでケアできますが、切れて出血したり、痛みがなかなか引かない場合は、自己判断でのケアを続けず、医師の診断により適切な医薬品での治療を行いましょう。
▶関連記事:妊娠中・授乳期の乳首トラブル|ヒリヒリした痛み、黒ずみ、ニキビのようなブツブツについても解説【助産師監修】
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8. まとめ:バストケアについてのよくある質問
1
妊娠したら、バストケアはいつから始めればいいですか?
保湿ケアは今日からすぐにでもOK、乳首マッサージは妊娠37週以降に医師の許可が下りたらスタート
妊娠線を予防するための保湿ケアは、妊娠初期から習慣として取り入れましょう。ただし乳首(乳頭)マッサージは、お腹の張りが生じる可能性があるため、産院の許可を得たうえで妊娠37週以降から始めるのが目安です。かかりつけの医師・助産師に相談のうえスタートしてください。
2
おっぱいに妊娠線ができた場合はどうすればいいですか?
根本的な改善は難しいけれど、保湿ケアを続けましょう
妊娠線は、一度できると完全に消すことは難しいとされているため、保湿ケアを続けることで肌のコンディションを整え、目立たなくなることに期待しましょう。できてしまった妊娠線のケアにおすすめのオイルなどもあります。どうしても気になる場合は、産後に皮膚科へ相談するのも選択肢の一つです。
3
乳頭ケアを行う時の注意点は?
必ずケアオイルを使い、傷つけないよう行って
乳首(乳頭)は粘膜の一部で傷つきやすいため、爪を短く整えた清潔な手で、オイルなどを使いながらやさしく行うことが基本です。
詳しいやり方は関連記事もあわせてご確認ください。
▶関連記事:乳首・乳頭マッサージとは?妊娠中のやり方・時期・陣痛との関係も解説【助産師監修】
4
授乳期に乳首が痛くてケアする場合、アイテムの選び方で注意点はありますか?
赤ちゃんの口に入っても安全なアイテムなら◎
授乳中は、赤ちゃんが頻繁に乳首(乳頭)を口に含むので、ケアアイテムにも一層の安全性を求めたいものです。無添加・無香料で、赤ちゃんの口に入っても問題がないと認められているアイテムを選びましょう。赤ちゃんの唇のケアにも使える処方であれば安心です。
5
卒乳後、胸がしぼんでしわしわになっちゃった…
保湿ケアを根気よく続けましょう
授乳期を終え、胸も通常サイズに戻っていく過程で、胸まわりの皮膚がしわしわになったと感じる人が多くいるようです。まずは妊娠中からのバストケアを習慣にしましょう。卒乳後も、必ず回復すると保証できるものではありませんが、保湿ケアや姿勢の改善、サイズの合った下着選びなど、日常でできることを続けてバストのハリ回復に努めましょう。
監修:布施 明美先生
医療法人産育会 堀病院 副院長兼看護部長。助産師/認定看護管理者。周産期医療、母子保健、助産師教育を専門とし、母子の健康支援と周産期医療の質向上に長年取り組む。
1980年より神奈川県立病院、母子保健センター、県立看護専門学校で母性看護学教員として勤務。2014年神奈川県立こども医療センター母性病棟・NICU病棟看護科長、2017年周産期センター副センター長兼副看護局長を経て、2020年より堀病院看護部長、2022年より副院長兼看護部長。日本助産師会総務理事、日本助産評価機構理事、産科医療補償制度再発防止委員など歴任し、2026年より神奈川県助産師会会長。








