この記事でわかること
- 人の唇は皮脂腺がゼロ。さらに赤ちゃんの唇は頻繁な授乳による摩擦やよだれの刺激で乾燥しやすい状態のため、赤ちゃん専用のケアが必要です。
- 唇ケアの基本は【刺激を減らす】【清潔】【保湿】の3つです。授乳後や食後に適切に行いましょう。
- 唇の保湿ケアには赤ちゃんにも使えるリップクリームを用意しましょう。
- 新生児の唇の白い皮むけ(吸いダコ・哺乳ダコ)は正常なケースがほとんど。無理にはがさないで。
- 出血・腫れ・水ぶくれがある場合は小児科・皮膚科を受診しましょう。
監修:布施 明美先生
助産師/認定看護管理者。周産期医療、母子保健、助産師教育を専門とし、母子の健康支援と周産期医療の質向上に長年取り組む。
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1. 赤ちゃんの唇が乾燥しやすい理由

赤ちゃんの唇はなぜすぐにカサカサになってしまうのでしょうか。
実はもともと唇には、他の皮膚と比べて乾燥しやすい構造的な理由があります。さらに赤ちゃんは皮膚のバリア機能が未発達なため、大人と同じ環境下でもより乾燥に気を付ける必要があるのです。
◼︎唇には皮脂腺がなく保湿膜が作れない
人間の皮膚は、皮脂腺から分泌される皮脂が、肌の水分の蒸発を防ぐ“天然の保湿膜”の役割を担っています。ところが唇には皮脂腺がありません。そのため外気にさらされると、水分がどんどん失われてしまいます。
◼︎授乳・よだれ・食べこぼしによる摩擦と刺激
赤ちゃんの唇は、毎日の授乳時に繰り返し摩擦による刺激を受けています。母乳やミルクが唇に残ったまま乾燥するとそれが刺激になることもあります。
さらによだれも乾燥の要因の一つ。唾液が蒸発するときに唇の水分を一緒に奪い、カサつきや荒れにつながります。
離乳食開始後(生後5〜6ヶ月以降)は、食べこぼしによる刺激も加わります。
◼︎口呼吸や、唇を舐める癖も乾燥を招く
意外と盲点なのが、口呼吸になっていること。鼻詰まりや睡眠中の癖で口が開いていると、出入りする空気が唇を直接乾かしてしまいます。
また唇を舐める癖がつくと、唾液の蒸発時に水分も一緒に奪われ乾燥の悪循環に陥りやすいもの。パパやママ自身も、唇を舐めていて乾燥が酷くなったという経験があるのではないでしょうか。
2. 口周りのケアはアレルギー予防としても大切
赤ちゃんの口周りの肌荒れを放置すると、食物アレルギーなどの発症リスクが高まる可能性があるのをご存知ですか?
◼︎口周りの肌荒れが食物アレルギーにつながる仕組み
食物アレルギーは「口から食べる」だけで起こるわけではありません。荒れた肌のすき間から食べ物の成分(アレルゲン)が侵入することで、体が「異物だ!」と反応し、感作(次にその物質が入ってきた時に反応する準備状態)を引き起こす原因になりうるとされています。
赤ちゃんの肌の厚さは大人の約半分。特に頬やあご(口周り)は、おでこや鼻筋と比べて皮脂が少なく、乾燥や摩擦ですぐに肌が乾燥して、異物が入り込みやすい状態になってしまいます。

つまり、赤ちゃんの唇はもちろん、その周囲の肌も含めて口周り全体を肌荒れのない状態に保つことは、肌トラブルだけでなくアレルギー予防としても期待できます。小さなケア習慣の積み重ねで赤ちゃんの肌と健康を守りたいものです。
3. 新生児の唇の白い皮むけは大丈夫!吸いダコを正しく理解しよう
新生児の時期に「唇の真ん中に白い塊がある」「薄い皮がめくれている」と驚いたことはありませんか?多くの場合、それは哺乳ダコ(吸いダコ)という、授乳による自然な現象。母乳やミルクを飲む際に上唇を内側に巻き込んで吸うことで、摩擦が繰り返され一時的に唇の皮膚が厚くなった状態です。
赤ちゃん自身に痛みはなく、授乳が上手になるにつれて消えていくのが一般的です。

◼︎吸いダコの特徴と正しい対処
- 唇の中央に白っぽい皮が厚くなっているが、痛みはない
- 授乳が頻繁な新生児期に目立ちやすい
- 生後3ヶ月頃を目安に、自然に消えていくことがほとんど
- 無理にはがすのは絶対NG!唇が傷つきます
病変ではないため、安心してください。この時期ならではのかわいい現象と捉え、やさしく保湿しながら自然に消えるのを待ちましょう。
◼︎経過観察でよい症状と受診が必要な症状
その他にも赤ちゃんの唇トラブルはさまざま。場合によっては受診した方がいいケースもあります。「これは大丈夫?」「受診すべき?」と迷う場合は、以下の表を参考に赤ちゃんの症状と照らし合わせてみてください。
|
症状 |
考えられる原因 |
対応 |
|
唇中央の白っぽい皮むけ(痛みなし) |
哺乳ダコ(吸いダコ) |
成長と共に自然に治るため、 保湿して様子見 |
|
唇全体のカサつき・乾燥 |
乾燥・口呼吸 |
保湿して様子見 |
|
唇が赤く腫れる |
アレルギー・炎症の可能性 |
皮膚科・小児科へ |
|
複数の水ぶくれができる |
ヘルペスの可能性 |
皮膚科・小児科へ |
|
出血が続く・繰り返す |
ひび割れ・炎症 |
皮膚科・小児科へ |
|
口角が繰り返し切れる |
口角炎・刺激 |
皮膚科・小児科へ |
上記のように、白い皮むけや軽いカサつきは保湿ケアしながら経過観察でよいケースがほとんどです。一方、赤みや腫れ・水ぶくれ・出血が続く場合は早めに受診しましょう。
4. 赤ちゃんの唇ケアの基本は【刺激を減らす】【清潔】【保湿】
赤ちゃんの唇の荒れを予防するには、日ごろから次の3つを意識したケアが効果的です。唇は荒れやすい半面、早めに対処すれば治りやすいのも特徴。カサつきに気づいたら、この3ポイントを見直して丁寧にケアしてあげましょう。

◼︎ポイント① 日常の中での刺激を減らす
- ゴシゴシ拭かない
乾いたガーゼやティッシュペーパーでこすると、デリケートな肌が傷つきます。手口ふき(ウエットティッシュ)ややわらかいタオル・コットンをぬらして、ポンポンと押さえるように拭いてあげましょう。沐浴後もタオルでやさしく押さえ拭きします。
- 舐める癖をつけさせない
乾いた唇を舐めること自体が刺激となるほか、唾液の蒸発でさらに乾燥が進むことに。舐める癖を起こさないように常に保湿された状態を保ちましょう。
- 口呼吸にさせない
口に出入りする空気によって唇が乾燥してしまうため、鼻の中をケアして鼻呼吸を促すことが大切です。鼻詰まりが長く続く場合は小児科に相談を。
◼︎ポイント② 清潔を保つ
- 授乳のたびきれいにする
授乳後は毎回、やわらかいタオルやコットンをぬらして、唇と口周りをやさしく押さえ拭きします。口角やあごにミルクが残っていないか確認しながらきれいにしてあげましょう。
- よだれはこまめに拭き取る
よだれで濡れている状態、よだれが乾いた状態、どちらも唇や肌のバリア機能の低下につながり、肌トラブルやアレルギーの原因となります。よだれが多い時期は大変ですが、気づいたらすぐケアできるよう、拭くアイテムを手元に用意しておくのがおすすめです。
- 食べこぼしは放置しない
離乳食が始まると、唇や口周りに食べ物が直接触れることに。「ごちそうさま」の後は、ぬらしたタオルやコットンで汚れをやさしく拭き取ればさっぱり。赤ちゃんは食べ物を直に触っていることも多いので、手もきれいにしましょう。
- 1日1回は洗浄料で洗う
入浴時はたっぷりの泡を使いやさしく洗ってあげましょう。洗った後は保湿ケアを忘れずに。
◼︎ポイント③ 保湿して守る
- 唇にはリップクリームを塗る
清潔にしたらすぐに保湿することが肌荒れの予防につながります。唇には赤ちゃん用のリップクリームを用意しましょう。リップクリームを塗る際のポイントは、ずばりオーバーリップ。特に口角は乾燥や切れが起こりやすいので、唇より少し広めに口角まで広げます。
- 口周りの肌は保湿ケア
口周りの肌は、肌用の保湿剤で潤してあげます。乳状ローションやクリームなど、肌の状態や季節に合わせて適切なものを選びましょう。
5. 赤ちゃんの唇乾燥に何を塗る?安全なリップクリームの選び方
◼︎赤ちゃん用リップクリームを選ぶ5つのポイント
唇に塗るものは口の中に入る可能性が高いので、「舐めても大丈夫?」という成分への不安はつきものですよね。
リップクリームを選ぶ際は赤ちゃん専用のものを選べば安心です。特に以下の5つのポイントを確認しましょう。
❶無香料・無着色
香りや色素は刺激のもとになりやすいため避けましょう。
❷食物アレルギーテスト済み
赤ちゃんが舐めることを前提にアレルゲンの有無を確認。
❸低刺激処方
赤ちゃんの未発達な肌に合わせた処方を選びましょう。
➍塗りやすい形状
少量ずつ細かく塗れるチューブタイプがおすすめ。中身が空気に触れないので衛生的に保てます。
❺はちみつ不使用
保湿成分としてはちみつ由来の成分が含まれているものは必ず避けてください。
乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、厚生労働省は1歳未満の乳児へのはちみつ摂取を禁止しています。スキンケアアイテムも同様に成分表を必ず確認してください。
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html

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◼︎ワセリンとリップクリーム、どちらを使う?
ワセリンは、皮膚表面を油分でコーティングし刺激から守るのに効果的。授乳後などに唇を一時的に保護するといった使い方はOKです。ただし成分が油分のみのため、唇への水分(うるおい)補給という点では限界があります。ベタつくので、入浴時に赤ちゃん用洗浄料では落としきれないことも。
一方、赤ちゃんの唇専用のリップクリームは、唇のための保湿成分と保護成分がしっかりと配合されています。口に入っても安全という点でも、主な唇ケアは専用のリップクリームで行いましょう。
6. 赤ちゃんに大人用リップクリームは使える?成分でチェックしたいこと
「手元に大人用リップクリームしかない。赤ちゃんに使ってもいいの?」という疑問もよく聞きます。結論は、できれば「赤ちゃんに使える」と記載されたものを選ぶのが安心です。大人ならば問題なく使える香料などの成分も、赤ちゃんのデリケートな唇には刺激になることがあるからです。
やむを得ず使用する場合も、以下の成分が入っていないことを確認しましょう。
大人用リップクリームで注意したい成分一覧
|
成分・特徴 |
赤ちゃんへのリスク |
|
香料・精油 |
刺激・炎症の原因になることも |
|
メントール・カンファー(清涼感成分) |
乳幼児には刺激が強すぎることも |
|
着色料 |
刺激・炎症の原因になることも |
|
はちみつ成分 |
1歳未満は乳児ボツリヌス症のリスク |
7. 唇にこんな症状が出たら小児科・皮膚科へ
ほとんどの唇の乾燥・カサつきは、こまめな保湿ケアで改善します。
ただし、以下のような症状がある場合は、医療機関の受診をおすすめします。「なんとなく気になる」程度でも、専門家に相談するのが一番安心ですので、かかりつけの小児科・皮膚科に気軽に問い合わせてみてください。
- 唇から出血が続く・何度も繰り返す
- 唇や口周りが腫れている
- 水ぶくれが複数できている(ヘルペスの可能性)
- 強い赤みやただれがある
- 口角が繰り返し切れる
- 2〜3日保湿ケアを続けても改善しない
- 食後に唇が腫れる→食物アレルギーの疑いがあるので直ちに受診を

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8. 赤ちゃんの唇ケアについてよくある質問
1
リップケアはいつ行うのがベストですか?
授乳後・食後・外出前・就寝前がおすすめです。「拭いたらすぐ塗る」を習慣化できるといいでしょう。保湿剤は荒れやすい口角まで広めに塗るのがポイントです。口周りの肌ケアも同時に行いましょう。
2
保湿剤はワセリンとリップクリーム、どちらがよいですか?
どちらも使用可能ですが、リップクリームは唇の保湿・保護成分が含まれているのに対し、ワセリンは油分なのでできるのは唇の保護のみです。日常の保湿ケアには赤ちゃん用のリップクリームの使用がおすすめです。
3
赤ちゃんがリップクリームを舐めてしまいます。大丈夫ですか?
赤ちゃん用の無香料・無着色・はちみつフリーのリップクリームで、赤ちゃんが舐めることまで考慮した製品を選ぶのがおすすめです。食物アレルギーテストなどを行っている製品もあります。万が一大量に舐めてしまった場合や体調変化があった場合は、念のためかかりつけの小児科にご相談ください。
4
新生児の唇の白い皮は取ってもいいですか?
白い皮の多くはおっぱい・ミルクを飲む際にできる哺乳ダコ(吸いダコ)で、赤ちゃんが授乳に慣れるまでの一時的なものです。無理に取ると皮膚が傷つき感染のリスクがあるため、保湿しながら自然に治まるのを待ちましょう。痛みや赤みがある場合は小児科を受診してください。
5
何度も唇の保湿ケアをするのって大変そう…
慣れないお世話で疲れていたり、授乳が頻繁な時期には、毎回保湿できないこともあるでしょう。それでもカサつきが気になった時にはさっとケアしてあげたいもの。複数のお世話スペースにリップクリームをスタンバイしておくのもおすすめです。
6
2歳の子どもがいますが、大人用リップクリームはNGですか?
3歳までの赤ちゃんとその後のキッズ期は、まだまだ肌が成長途中です。メントールや香料など、大人であれば問題ない成分でも刺激になる場合があります。できるだけ低刺激・無香料の赤ちゃんから使えるアイテムを選んであげましょう。
監修:布施 明美先生
助産師/認定看護管理者。周産期医療、母子保健、助産師教育を専門とし、母子の健康支援と周産期医療の質向上に長年取り組む。
1980年より神奈川県立病院、母子保健センター、県立看護専門学校で母性看護学教員として勤務。2014年神奈川県立こども医療センター母性病棟・NICU病棟看護科長、2017年周産期センター副センター長兼副看護局長を経て、2020年より堀病院看護部長、2022年より副院長兼看護部長。日本助産師会総務理事、日本助産評価機構理事、産科医療補償制度再発防止委員など歴任し、2026年より神奈川県助産師会会長。








