おむつかぶれ

おむつかぶれ

多くの赤ちゃんが経験する「おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)」。一度荒れてしまうと、赤ちゃんもお世話をするママ・パパも非常に大変な思いをします。

おむつかぶれに悩まないためには、日々のケアがとても大切です。この記事では、「おむつかぶれとは何か?」と「おむつかぶれを予防するケアのコツ」を徹底解説します。

監修:馬場 直子先生
皮膚科医 神奈川県立こども医療センター皮膚科
https://kcmc.kanagawa-pho.jp/department/dermatology.html

1983年滋賀医科大学卒業。横浜市立大学皮膚科講師を経て、1994年神奈川県立こども医療センター皮膚科医長、 2002年より神奈川県立こども医療センター皮膚科部長(2024年より非常勤)。横浜市立大学皮膚科臨床教授を兼務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本臨床皮膚科医会会員、日本皮膚免疫アレルギー学会会員。

おむつかぶれとは?

おむつかぶれは、医学的には「おむつ皮膚炎」と呼ばれる肌のトラブルのことを言います。新生児~幼児に多い皮膚疾患のひとつで、おむつに接する部分の炎症反応のことです。

「おしりかぶれ」などと呼ばれることもありますが、おしりだけではなく、性器(おちんちん・おまた)や下腹部、太もも(脚のつけ根)にも現れます。赤みから始まり、症状が悪化すると、丘疹(ブツブツ)やびらん(皮がむけてジュクジュクした状態)、潰瘍(皮膚がはがれて深ぼれした状態)なども見られます。

図:最初の赤くなった状態(紅斑)

赤ちゃんの「おむつかぶれ」は、なぜ多い?

※2025年4月ナチュラルサイエンス調べ(1歳までのお子さまがいる方 n=685)

赤ちゃんは、肌が未成熟で非常にデリケートな状態です。肌のうるおいが少なく、外からの刺激から肌を守る「バリア機能」も不完全な状態です。

ただでさえ肌荒れを起こしやすい赤ちゃんですが、おむつの中は高温多湿で、排泄物や腸内細菌も多く、常に過酷な環境にさらされています。また、赤ちゃんはウンチやおしっこの回数が多く、おむつ替えのたびに1日に何回も拭き取られる(こすられる)ことも、 おむつかぶれを引き起こす原因となります。

おむつかぶれを引き起こす主な刺激

排泄物の(長期的な)付着

ウンチの中に含まれる消化酵素(フロテアーゼ・リパーゼ)が肌の刺激に。ウンチやおしっこは肌のpHを上昇させ、消化酵素の働きがより活性化されて肌を刺激します。

蒸れによる「肌のふやけ」

おむつ内は、ウンチやおしっこ、汗などの影響もあって湿度の高い状態。肌がふやけて弱くなり、物理的刺激や刺激物の影響を受けやすくなります。2)
2)山本一哉、「環境と皮膚-胎脂とおむつ部を中心に- 」、小児内科、1987、臨時増刊号、53-57 

おむつのこすれ・拭き取り時の摩擦

ふやけた敏感な肌へのおむつ替え時の摩擦や、おむつ自体のこすれも、おむつかぶれを引き起こす原因になります。

おむつかぶれを起こしやすい時期は?

  • おむつかぶれが多いと考えられるタイミング①:新生児期
    新生児期は「胎便」と呼ばれるねっとりとしたウンチが出る時期。母乳やミルクしか飲まないので、ウンチがゆるくて出る頻度も高く、肌を拭きとる回数も多いことで、トラブルが起こりやすくなります。
  • おむつかぶれが多いと考えられるタイミング②:生後半年頃
    生後半年頃からの離乳食期は、ウンチに様々な食物も含んでおり、腸内細菌の種類も増え、未消化な食物も含んでいます。量も多くなり、皮膚への負担も増えます。
  • おむつかぶれが多いと考えられタイミング➂:下痢のとき
    赤ちゃんは風邪や胃腸炎などにより、大人よりも下痢便になることも多いもの。硬い便よりも下痢便の方が、消化酵素や未消化な成分や水分が多く、より排便回数が増えるため皮膚を強く刺激します。

おむつかぶれが増えやすいタイミングとして3つをあげましたが、多くの赤ちゃんが1歳までの間に「おむつかぶれ」を経験します。このほかの時期でも、おしりや性器まわりの肌荒れ・かぶれで受診をする方はいるため、おむつをつけている間は常に注意が必要です。

おむつかぶれ、「予防」が大切な理由

おむつかぶれは、赤みなどの炎症から始まり、ジュクジュクとしたひどい状態になることも珍しくありません。そんな状態の肌にウンチやおしっこの汚れが付着すると、ひどい痛みを伴い、赤ちゃんもお世話をするママやパパもつらい思いをします。
そうならないためには、炎症が起き始めたら早めに受診をすること、そして、普段の赤ちゃんのお世話の中で予防を心がけることが大切です。

赤ちゃんのおむつかぶれ体験談

「赤ちゃんのおしりの肌は、荒れてしまうと本当に大変です…!」

胃腸炎でおしりの肌が荒れてしまい、排泄のたびにしみるから大泣き、ただれた部分を拭くときに大泣き。病院でもらったぬり薬をぬっても、すぐウンチが出て拭き取らなければならず…。私もつらくてつらくて、泣きながらおむつを替えていました。
(おしりトラブル経験ママコメント:赤ちゃん6か月時)

おむつかぶれを防ぐ、3つのポイント

おむつかぶれにならないためには、日々のケアがとても大切です。次の3つのポイントをぜひ参考にしましょう。

1.汚れた状態を放置せず、おむつの中を清潔に保つ
2.おむつ替え時に、肌を強くこすりすぎない
3.保湿ケアで、肌の「バリア機能」をサポートする

1.汚れた状態を放置せず、おむつの中を清潔に保つ

最近の紙おむつは吸水性がよく、多少のウンチやおしっこでは、赤ちゃんも不快感がなく泣いて教えてくれないこともあります。おむつはこまめにチェックし、排泄をしていたらその都度交換をして、汚れがついたままにせず、早くきれいにしましょう。こまめなおむつ替えが、おむつ内の蒸れた状態の軽減にもつながります。

2.おむつ替え時に、肌を強くこすりすぎない

汚れをキレイに落すことは大切ですが、おむつ替えの際に、ゴシゴシと強く肌をこするのは避けましょう。おむつ内の蒸れでふやけた肌は非常にデリケートな状態で、こする刺激によって肌荒れが起こることもあります。

水分をたっぷり含ませたおしり拭きシートなどで、力を入れすぎずにやさしく拭きましょう。「やさしく」とは言っても、軽くなでる程度ではシワの間の汚れを落とせません。シワの奥こそ汚れが溜まり荒れやすい部分ですので、拭き残しがないようにシワを広げてケアしましょう。

3.保湿ケアで、肌の「バリア機能」をサポートする

肌をキレイにする時には、どうしても肌のうるおいもいっしょに奪ってしまい、肌のバリア機能が低下します。汚れを落としたあとは、保湿ケアまでワンセットでおこないましょう。保湿ケアによって未熟な赤ちゃんの肌のバリア機能を補うことで、トラブルのリスクを軽減させることができます。

次からは、具体的なケア方法についてご紹介します。

「おむつかぶれ」を防ぐ、毎日のケアのコツ

ケアのコツ①:おむつ替え時の拭き方(おしり・性器まわり)

おむつ替えのときは、肌に汚れが残らないように細かい部分まで拭き取りましょう。太もものつけ根やおしりのシワの奥、肛門まわりは、汚れが溜まって肌荒れを起こしやすい部分。シワを広げて、奥までキレイに拭き取ります。

拭く方向は、前方から後方へ。性器まわりを先に拭いたあとに、肛門まわりをキレイにしましょう。逆方向だと、ウンチの汚れにより尿道炎や尿路感染症のリスクが高まります。性器まわりの拭き方は、下記を参考にしてください。

・男の子の場合(おちんちんのケア)
皮膚の重なってる部分も、忘れずに拭き取ります。おちんちんは持ち上げて、タマタマの裏側などもキレイにしましょう。

・女の子の場合(おまたのケア)
脚を持ち上げて、上の方から肛門に向かって拭き取ります。尿道や膣のまわりにウンチがつかないように気をつけましょう。

先生からのアドバイス

市販のおしりふきシートでは、汚れを落とすための水分が不足している場合があります。ウンチの付着が多いときには座浴を行う、赤ちゃん用の汚れ拭き取り用ミストローションなどをプラスで使うのもおすすめです。

ケアのコツ②:お風呂での洗い方(おしり・性器まわり)

洗浄料はよく泡立てて、ガーゼなどは使わずに、手を使って洗います。肛門まわりまで泡を使って洗いましょう。おしりの割れ目のあいだ、太ももの付け根は、汚れが溜まりやすい部分です。シワを広げて奥まで洗い、その後のすすぎや拭き取り、保湿ケアの時も忘れずに行います。

  • 男の子の場合(おちんちんの洗い方)

    洗浄料を泡立てて手に取り、シワやタマタマで皮膚が重なっている部分も、忘れずに洗いましょう。全体を洗った後、おちんちんの先端は、洗浄料をつけずにシャワーなどの清潔なお湯で洗い流します。



  • 女の子の場合(おまたの洗い方)

    洗浄料を泡立てて手に取り、おまた全体をやさしく洗います。粘膜の部分は、割れ目を軽く開いて、清潔なお湯で流しましょう。割れ目は、大きく開かないと見えない部分(膣口)まで洗う必要はありません。

先生からのアドバイス

新生児期は、割れ目に白い塊がくっついていることがあります。これは「胎脂」と呼ばれる、おなかの中で赤ちゃんを包んでいた脂で、自然に落ちていきます。汚れではないため、無理に落とそうとしないようにしましょう。

ケアのコツ➂:おしりまわりの保湿&おむつのつけ方

おむつ替えの時も、お風呂上がりも、保湿ケアをすることをおすすめします。おむつの中は常に湿度が高く、おしっこやウンチの刺激にも常にさらされるため、非常に肌荒れを起こしやすい状態です。
「キレイにしたら保湿」を合言葉に、こまめな保湿ケアで肌のバリア機能をサポートしてあげましょう。荒れやすい肌のシワの奥まで、しっかり保湿剤をぬります。

おむつかぶれの受診の目安は?

赤みやブツブツ、ただれなどの肌の炎症は、スキンケア(保湿ケア)では治りません。スキンケアはあくまで、肌荒れを起こさないための予防的な役割です。肌に炎症が出ている時は、皮膚科を受診しましょう。

市販のお薬もありますが、おしりや性器まわりは、おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)だけでなく、カンジダ菌が原因となっている炎症が起こりやすい部分です。原因によって、治療方法が異なりますし、両方を併発している場合もあります。自己判断はできないため、早めの受診で適切な治療を受けるのがおすすめです。

これも知りたい!おむつかぶれQ&A

「座浴」とは 何ですか?

ぬるま湯でおしりまわりをキレイにする方法です

「座浴」とは、シャワーや洗面器のぬるま湯で、おしりを洗うことを言います。普段のおむつ替えでは、おしり拭きシートで肌を拭き取るかたが多いと思いますが、何度も肌をこする刺激で、肌が荒れてしまうことも。座浴であれば、肌の刺激を減らしておしりをキレイにすることができます。特に、下痢のときなどはおむつ替えも頻回になるので、ぬるま湯でやさしく汚れを洗い流せる座浴を取り入れるのがおすすめです。

普段のおむつ替えは、おしりふきを使えばいいですか?

水分を足したり、清浄綿をたっぷり濡らして使うのがおすすめです

おしり拭きシートの種類によっては、肌の汚れを拭きとるには水分が足りない場合もあります。水分が少ないと、肌を拭き取るときの刺激にもつながるため、おしり拭き取り用ミストなどで水分を足したり、清浄綿にたっぷりの水分を含ませるのがおすすめです。座浴を取り入れるのも、肌の負担を減らすことにつながります。

保湿ケアをしても、肌荒れがよくなりません

荒れてしまった場合は早めの受診を

あくまで保湿ケアは予防の役割です。保湿ケアでは、起きてしまった肌の炎症をよくすることはできず、お薬での治療が必要です。「赤みくらいで受診しなくても…」と思われる方も多いですが、肌の赤みは炎症が起こっているサインです。ひどく荒れてしまうと大変ですから、いつもと違う肌状態のときは、早めに受診することをおすすめします。

保湿ケアをすると、肌が余計にふやけませんか?

水分が気になる場合は、少し乾かしてからおむつを

保湿ケアを行うことは、赤ちゃんの肌のバリア機能をサポートして、すこやかな肌状態を保つことにつながります。肌への刺激が多いおしりまわりは特に、キレイにするたびに保湿を習慣にしてほしいと思います。保湿剤をぬったあとに、水分の肌のこりが気になる場合は、少し乾かしてから(保湿剤が肌になじむのを待ってから)おむつをつけるようにしましょう。

ステロイドを処方されましたが、おまたのまわりに使うのが不安です

適切な薬の使用が、赤ちゃんの負担も減らします

病院から処方されるお薬(ステロイド薬など)は、症状や部位によって適切な種類と量が出されます。治療に必要なお薬ですので、お医者さんの指示に従ってきちんと使うことが大切です。適切にお薬を使用することで、治療を短期間で終わらせることができ、赤ちゃんの負担も軽くなります。自己判断で薬をやめたり、逆に指示外の使用(過去の薬を別の部位に使う、期間外に使うなど)は避けましょう。

毎日くりかえすお風呂やおむつ替え。ちょっとポイントをおさえるだけで、おむつかぶれの予防につながります。ぜひ、参考にしてみてくださいね。

 

  • 拭き取りケア

    汚れをするんと落として肌荒れを防ぐミスト

    180ml
    1,650円 (税込 1,815円)

    おしりに直接スプレーした後、おしり拭きで拭き取れば、
    うんち汚れや刺激のもとをオフします。

  • おしりの保護

    デリケートなおしりまわりをやさしく守る
    密着ベールクリーム

    53g
    2,000円 (税込 2,200円)

    うんち・おしっこなどの汚れやムレによる
    刺激から肌を守り、おむつかぶれを起こしにくい肌に導きます。